道徳ライブラリ

子どもも先生も楽しい、心揺さぶる道徳を。

2年生 『公園のおにごっこ』学研

⑴内容項目

「親切,思いやり」低学年 身近にいる人に温かい心で接し,親切にすること。

 

⑵主題

「みんなが楽しい遊び」

 

⑶ねらい

ごっこをやめてしまったゆうたが元気になり,みんなが楽しく遊べるようになったことについて考えることを通して,自分よりと年下の子に対して自分なりに理解して行動し,相手が喜ぶと自分も嬉しくなることについて気付くことで,進んで親切にしようとする心情を育てる。

 

⑷授業展開

導入

①親切にしてもらった時,どんな気持ちかな?

追発問

・もう少しでできそうな時,手伝ってもらったらどんな気持ち?

※2年生の発達段階にとってゆうたへの共感は難しい場合があるので,親切にしてもらって嬉しかったことだけでなく,うれしくない親切である「余計なお世話」について触れる。

 

(範読)

 

道徳的問題点の把握

②みんなは,どんなことを思って,ゆうたくんのそばに行くと急に向きを変えたり,わざと走るのを遅くしたのでしょう。その後,ゆうたくんは,どうでしたか?

※みんなは,ゆうたのために親切として行動していたことに気付かせたい。

 

中心発問

③2回目のおにごっこで,ゆうたくんが元気になり,みんな楽しく遊べたのはどうしてでしょう。

追発問

・ゆうたくんが元気に(はりきって)ていたのはなぜ?

・ゆうたくんは,なかなかタッチできないみたいだよ?

・1回目のおにごっこと何が変わったのかな?

・ゆうたくんが楽しそうなのを見て,みんなはどう思っているかな?

※タッチできなくてもゆうた自身が楽しいと感じるようになったこと,周りのみんながゆうたのことを考えて行動できたことについて考え,話し合いたい。

 

まとめの発問(テーマ発問)

④うれしい親切にするためにはどんなことが大切でしょうか。

(自分がする親切で相手がうれしくなるにはどんなことに気を付けたらいいかな?)

追発問

・親切にして,相手が喜んでくれるとどんな気持ち?

 

⑸授業のポイント

低学年の「親切,思いやり」では,親切をすると,褒められるだけでなく「相手が喜んでくれてにこにこと笑顔になる」ということ,さらに,自分も周りの人達もにこにこと笑顔になるということを感じさせたい。具体的には,自分勝手な親切をするのではなく,「相手が喜んでくれているかな?」と自分なりに気にかけながら「相手のこと」を考えていくことを学ばせたいです。

校内研推奨!「考える,議論する道徳」を体感する『大人道徳』

道徳科の授業とはなんでしょうか?

 

正しいであろうことを言わせる,書かせるもの?(忖度道徳)

目指すべき姿や考え方を教え込む?(押し付け道徳)

読み物教材の登場人物の心情理解のみで終止?(読み取り道徳)

単なる生活体験の話し合い?(読み取り道徳)

 

これらは,現在示されている道徳科授業の課題の一部です。

 

そうではなく,

「教師と児童生徒が共に探求する姿勢をもち,生き方や在り方について考え,

様々な価値観を交流させながら議論する時間」という意識をもつことが大切であると考えています。

 

その先に,道徳性(道徳的実践力)を身に付けていくことができるのではないでしょうか。

 

しかし,実際にどのような授業をすれば良いのかということが,知識的・技術的だけではなく,「体感的,雰囲気的にわからない」と悩みの声を頂きました。

 

それは,圧倒的に他教科に比べ,

「道徳科の授業時数が少ない」「他の先生の授業を見る機会が無い」

ことが原因ではないでしょうか。

 

そのような課題から,私は「模擬授業」「公開授業」をとても推奨しています。

そして,先生が他の先生方へ向けて道徳科の授業を行う,『大人道徳』が有効ではないかと考えました。先生方が本気で「生き方・在り方」にいて考え,議論し,道徳を楽しみながら学べるというものです。大人が考えるということで,まず,中学校の教材での授業案を載せています。是非、みなさんで道徳科を楽しみながら学んでいきましょう!

中学校2年生 『ネパールのビール』廣済堂あかつき

⑴内容項目

「よりよく生きる喜び」

 人間には自らの弱さや醜さを克服する強さや気高く生きようとする心があることを理解し,人間として生きることに喜びを見いだすこと。

 

⑵主題

「自分の弱さを強さに」

 

⑶ねらい

信頼に応えようと大変な苦労をしてビールを買って帰ってきたチェトリを迎え涙する私(筆者)の気持ちについて考えることを通して,

人間には弱さと醜さを克服できる強さや苦しさを乗り越えて気高く生きようとする心があることを理解し,人間として生きることに喜びを見いだそうとする心情を育てる。

 

「気高く生きる」…自己の良心に従って人間性に外れずに生きようとする心である。

 

⑷授業展開

導入

①ネパールにドラカという村で本当にあった話です。主人公は,テレビのディレクターの仕事でその場所へ行っています。その村について紹介します。

・危険なところで生活している。

・若者達,子ども達は,都会へ憧れている。

・お天道様に許される生活をしている。(純朴)

※ドラカ村の環境,その村人の状況などを捉えらるようにする。

 

(範読)

 

道徳的問題点の把握

2回目のビールの買い出しを頼む私は,どんなことを考えていましたか。

※欲望を押さえきれず,結局頼んでしまう時の心情に迫る。

 

追発問

・先生に村人や先生に相談した私は,どのようなことを後悔したのでしょう。

※チェトリが逃げたかもしれないことや事故あったかもしれないことなど,大きな過ちをおかしてしまったことに気付かせる。

 

中心発問

③チェトリの話を聞き,彼の肩を抱く私は,どんな思いで涙を流したのでしょう。

※チェトリに対してだけでなく,自分自身を振り返る視点にも考えさせたい。さらに,これからの生き方についてつなげていきたい。

追発問

・チェトリに対してはどんなことを思っているの?

・あんなに泣いたことはないとあるが,どうしてあんなにないたの?

・私は,深く,いろいろ反省したとあるが,どんなことを反省したの?

・これからどのように生きようと考えたのか?(まとめの発問につなげる)

 

まとめの発問(テーマ発問)

この私とチェトリの2人の出来事からどんなことを学びましたか?

追発問

・どのようなことを大切にして生きていきたいと思いましたか?

 

⑸授業のポイント

中学校の「よりよく生きる喜び」では,「自分の中にある弱さとそれを乗り越える強さ」に気付き,と「弱さを強さに」しなければと気付いた主人公の心情を中心に考えさせたい。具体的には,人間の弱さや醜さを捉える。しかし,チェトリの気高い,美しい行動によって弱さに向き合い,強くいきていく希望をもてるようにたい。

2年生 『ころきちのバイオリン』学研

 

⑴内容項目

「感動,畏敬の念」低学年 美しいものに触れ,すがすがしい心をもつこと。

 

⑵主題

「目の前に広がる美しさのすごさ」

 

⑶ねらい

自然の美しさを感じたことによって,バイオリンを弾くことにしたころきちの気持ちについて考えることを通して,美しい景色や音色,清らかな心に触れ,感動を感じる心や素直に行動する心情を育てる。

 

⑷授業展開

導入

①みんなは悲しい時,どうなってしまうかな?

※ころきちが悲しむ場面で共感しやすくするために交流する。

 

(範読)

 

道徳的問題点の把握

②森がめちゃめちゃになり,さらに大切な家が無くなった時,

ころきちは,どう思ったのかな?

※色の無い世界になり,何もする気になれない様子を捉えさせたい。

 

先行発問

ころきちは,春,夏,秋にそれぞれ何を見て,どんなことを感じたの?

※たんぽぽ,草原,青空,(蝉の鳴き声),夕日,紅葉を写真で提示し,簡単に捉えられるようにする。

 

中心発問

③ころきちは,どんなことを思いながらバイオリンを弾いたのかな?

追発問

・どうして,バイオリンを弾こうと思ったの?

・何のためにバイオリンを弾いているのかな?

 

まとめの発問(テーマ発問)

④きれいな景色(や音色)を見ると,人はどうなるでしょうか?

追発問

・どう感じる?

・どんな気持ち?

・どう変わるかな?

 

⑸授業のポイント

低学年の「感動,畏敬の念」では,自然が単に「きれいだな」というだけでなく,爽快さを感じ,気持ちが改められ,背筋を伸ばされるような「すがすがしさ」という感動に気付かせたい。美しいものは,自分に響いてくるものであり,感動することは,素敵なことであると感じさせたい。

2年生 『広がるあいさつ』学研

⑴内容項目

「礼儀」低学年 気持ちのよい挨拶,言葉遣い,動作などに心掛けて,明るく接すること。

 

⑵主題

「相手にあいさつを届けよう」

 

⑶ねらい

けい子達が聞いた「無言の挨拶」にどんな思いが込められているのかについて考えることを通して,挨拶には,様々な思いが込められていることに気付き,心の声を自ら届けたり,相手の心の声に耳を傾けようとする心情を育てる。 

 

⑷授業展開

導入

①「あいさつ」は何があるかな?

※どんなあいさつがあるか交流する。そして,あいさつは,言葉をつかっていることに気付かせる。

 

(範読)

 

状況の把握

②飛行場で働く人達が,飛び立つ飛行機に向かって何をしていましたか?

追発問

・その人達が手を振っているところは,おきゃくさんから見えているのかな?

※相手に気付かれなくても手を振っていることに気付かせたい。

 

中心発問

※モニターで飛行機が飛び立つ写真を見せ,児童に飛行機に向かって手を振る役割演技をさせてから中心発問につなげる。

③飛行機が飛び立つ時,働く人達は,どんなことを思いながら手を振っているのでしょう?

追発問

・お客さんにどんな気持ちを届けたいのかな?

・お客さんにどんなことを伝えたいのかな?お客さんは,どうしたら受け取れる?

・見ていないかもしれないのに(聞こえないのに),どうしてみんなまねをするようになったのだろう。

 

まとめの発問(テーマ発問)

今日学習をして,「言葉ではないあいさつ」は,どんなところがよいと思いましたか?

追発問

・そのようなあいさつをされた人は,どうすれば受け取ることができるかな?

※言葉ではないため,受け取る難しさを理解し,受け取ろうとする心構えについて話し合いたい。

 

⑸授業のポイント

低学年の「礼儀」では,「あいさつの力」を感じさせたい。本教材では,「無言のあいさつ」の良さやその挨拶を受け取るには,心の声に耳を傾けることが必要であることなどについて考えさせたい。

2年生 『グローブのへんしん』学研

⑴内容項目

「節度,節制」低学年 健康や安全に気を付け,物や金銭を大切にし,身の回りを整え,わがままをしないで,規則正しい生活をすること。

 

⑵主題

「いつまでも大切にするには」

 

⑶ねらい

新しいグローブを欲しがるしんごが,父に磨き方を教えてもらい,ピカピカになったグローブを見てどう思ったのかについて考えることを通して,

人の意見を聞くことや自分ができることを考える良さ,また,大切にできた時の気持ちの良さに気付き,物を大切にしようとする心情を育てる。

 

⑷授業展開

導入

①みんなの「大切な物」って何かな?

※どんな物を大切にしているのかを交流する。

 

(範読)

 

道徳的問題点の把握

②しんごは,どうして新しいグローブが欲しかったのでしょう。

※グローブをすでにもっているが,新しい物を欲しがる理由について注目させたい。

また,しんごの「上手くなれないから」の理由に気付かせたい。

 

中心発問

③ピカピカになったグローブを見て,しんごは,どんなことを思ったのかな。

追発問

・ピカピカになったら,何が変わるのかな。野球の練習に対してはどうかな。

・ピカピカになったら,どんな気持ちかな。

(・お父さん,お母さんはどう思っているかな。)※視点移動のため,難易度高

 

まとめの発問(テーマ発問)

④「物」を大切にするには?(何が必要だろう。何を大事にするとよいかな。)

追発問

・物を大切にすると?

 

⑸授業のポイント

低学年の「節度,節制」では,「よい生活習慣の気持ちよさ」を感じさせたい。具体的には,どのような意識と方法で物を大切にしていくのかということ,そして,手入れをし,大切にできた時の気持ちよさや前向きな気持ちになれることについて気付かせたい。また、物を大切にするとは,どのようなことであるかについても考えさせたい。

子どもに考えさせる道徳科へ!~道徳ライブラリの活用の仕方~

初めまして,道徳LABOです。

道徳科授業の悩みとして、

「子どもから意見が少ない…」

「自信をもって授業できない…」

「指導書の通りにしても深まらない…」

「授業の作り方がわからない…」

「導入は?中心発問は?終末は?どうすればいいんだろう…」

などをよく耳にします。

 

この道徳ライブラリを始めるきっかけとして,こんな出来事がありました。

後輩に

「指導書は読んでいるけど、道徳科の授業がうまくいきません。」

と相談を受け、私が作った指導案を渡しました。

3回程度、私の案で授業をすると、後輩は、

「授業しやすい」

「筋が通っていて教師も子どももわかりやすい」

「授業の作り方が少しずつわかったきた」

と感想を頂きました。

 

そこで、授業案をできるだけシンプルに伝えることで役に立てないか?と思ったわけです。少しでも,毎週の道徳科授業が楽しく,子どもの心揺さぶるものになれれば嬉しいです。

私自身の実践やサークル活動での提案,または参加者と一緒に考えたものを載せていきます。是非,ご活用ください。

 

指導書よりも子どもにより考えさせる指導案を目指しています。

授業案の構成は、

 

教材名

⑴内容項目

⑵主題

⑶ねらい

⑷授業展開

⑸授業のポイント

とすぐに活用できるよう,読みやすくできるだけシンプルに記述しています。

 

 

参考文献

小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編

楽しく豊かな道徳科をつくる1 2

価値観を広げる道徳授業づくり 教材の価値分析で発問力を高める

島恒夫,吉永幸司のみんなでつくる「考え,議論する道徳」

納得と発見のある道徳科授業